カウボーイ・トロイ周辺

ぐるっとネットを一回りすると、カウボーイ・トロイについては誰も彼もが、程度の差こそあれ「カントリーの未来を変えるかもしれない」という言葉で締めくくっている。実際彼や彼の観衆を現地で見ている人の評価だからやっぱり期待はされているのかもしれない。2枚目のアルバム『Black in the Saddle』で客演しているメンツを見て(『聴いて』ではない点に注意。聴いてません(笑))、どういう連中か確かめてみた。いやあもう、知らないと果てしなくどうでもいいメンツですね。

まずAvenged SevenfoldのボーカルM. Shadows。よくヘビーメタルと呼ばれているバンドで、なにがしかハードロックの方面では話題のようだ。勉強不足で知らないのですいません。っていうか関係ないけどギターソロすごいぞ。

J. Moneyは同名のサザン・ラップのド新人がいるんでびっくりこいたんだけど、実はBig & RichのJohn Richの別名。というかこの名前ってのはJohnny Cashにかけてんのかね?

Angela Hackerはテレビ番組「Nashville Star」で優勝して「The Winner Is Angela Hacker」というアルバムを2007年4月3日にリリースした女性ボーカル。このアルバムはウォルマート限定販売だったらしい、ってとこがまた「らしい」わなあ。要するにちょっと「ねじ込んだ」という感じのする配置。

James OttoはBig & Rich周りのMuzikMafiaつながりの男性シンガー。この人も「オルタナティブ・カントリー」に分けられがちな人。

こういう顔ぶれを見ると、「Nashville Star」という番組を見た事がないんだが、どうもこの番組との繋がりも非常に強く、番組をプロモーションの中心に据えているような気がする。アイドルとかジャリタレとかいう言葉で表現した方が近いのかもしれないし、カントリーというよりは、もっとポップという言葉を目指しているのかもしれない。…とまあ、そんな策略の話はどうでもいいよな。正直このアーティストの存在ではっきりと露呈したことは、20世紀のアメリカ音楽が人種的に分離されたまま発展し、ジャンルの壁が打ち砕かれた現在でも依然として市場には人種問題が存在しているという事実だ。白人は白人の、黒人は黒人の音楽をやれば売れるんじゃないかなあ、という思惑でもって音楽が生産されていく。そしてこの場合は、カントリーでラップをしたこと自体がオルタナティブというラベルを強化していくだけの話で、いくらカウボーイ・トロイがカントリーというジャンルに固執しても決して純粋な伝統的なカントリーとして認められることはない。おお、チャーリー・プライドとはまるで真逆だ。

以前のエントリーの、ジャック・クレメントの作曲心得にもあったが、「自分の歌で自分のことを明らかにすべし」という言葉の意味は重い。チャーリー・プライドがなぜ感動的な歌なんだろうと考えると、やっぱり自身のルーツに忠実だったからではないのか。しかし忠実であるばかりではメシは食えないかもしれない。虚飾をまとったポップスターが不本意ながらもポップスを歌うことはままあることだ。そうして虚飾と現実の境界線で立ち往生したら、精神は病んでしまう。

まああのね、バランスだよな、何事も。