Cowboy Troy

Black in the Saddle
なんとなく自分でも分かっていることなんだけど、例えば鳥居みゆきのことを「あんまり好きじゃないんだよね」みたいに他人に言うんだけど、そういう場合は確実に鳥居みゆきが気になって気になってしょうがないわけで。だから前回のエントリーにも「カウボーイ・トロイに違和感を感じる」なんて書いてるのは、つまり俺自身がカウボーイ・トロイを気にしているということなんだよね。話を引っ張って申し訳ないんですが、行きがかり上、今回はカウボーイ・トロイについてなんか調べたいと思う(結局そうなのか…)。いや俺決してCDは買わないよ、こんな色物のさ…。


正味カウボーイ・トロイのバイオなんて特筆すべきことはない。1970年12月18日テキサス州ヴィクトリア生まれ。アフリカ系アメリカ人。元々は靴のセールスマン。ラッパーとしてこれまで2枚アルバムを出している。Country RapやらHick-Hopとか呼ばれているが、早い話がカントリー風なトラックに乗せてラップしました、というもの。もっと言えば、「カントリー風」なのはカントリーともほど遠く、「オルタナティブ・カントリー」と呼ばれているもので、外枠はロックでちょっとフィドルやラップスチールなどの楽器で味付けした音楽だ。まあそんなんだから、定義付けなんてどうでもいいや。

で、この2枚のアルバムっていうのは、どちらもBig & Richがプロデュースしている。そうなるとBig & Richとは誰ぞ、という話から引っ張らないとならないんだが、「オルタナティブ・カントリー」における人気デュオで、グラミーやCMAにもノミネートされている。そのBig & Richの「Rollin' (The Ballad of Big & Rich)」っていう曲でラップしたのが、どうやらカウボーイ・トロイの初出らしい。それが以下の映像。

ちょいと歌詞を意訳しようと思ったけど、別に大したことは言ってない。カントリーの男がロックンロールやったりますわい、やりたいようにやるっぺさ、あー歌えや踊れや、みたいな感じ。リリックの中には「チャーリー・プラウドは黒人だったべさ、ジョニー・キャッシュはロケンロールだったべさ」という部分も入ってて、その後にカウボーイ・トロイがラップするんだが、俺はテキサス出身だべさとかブラック・カウボーイだべさというワードと共にご丁寧にスペイン語まで入り交じり、Go cowboy Go cowboy Goとアオリを入れてる。

お分かりかと思うが、オルタナティブ・カントリーというサブジャンルそのものについて言及しているようなものだ。ロックだってええやんけ、ラップと混ざってもええやんけ、黒人だってええやんけ…なるほどそうですな、この態度こそがオルタナですな。

なんとなく想像したんだけど、こういう形のカントリーが成立し得たのは、90年代以降にテキサスに定着したサザンヒップホップのシーンが盛り上がったからだと思う。シーンが大きくなればそれだけラッパーの数だって増えるだろう。それにカントリーとは言うけれど、なんのことはない、これをロックだと解釈するなら、これまでにも多くのラッパーがラップしてきたのだから、不自然なことではない。

ただこれをあくまでも「カントリー」だと言うところで、状況は一変する。当然戸惑うリスナーも当初は多かったとは言うんだが、押し通すことで事が収まるのは洋の東西を問わない。

カウボーイ・トロイの曲に、カントリーに付き物のラインダンスの振り付けまで開発されている。なんでしょうか…何か裏にはとてつもなく剛腕な仕掛人がいるような気がする。