田母神論文で気がついた

オバマ大統領誕生の夜のブロンクスのかけ声について小浜市と全然違うってことにちょっとだけ触れたんだけど、大体日本のかけ声だと「オーバーマ!(うん)オーバーマ!(うん)」になるのが常だ。これは「イーノーキ!(うん)イーノーキ!(うん)」と同じで、もともと猪木の入場曲はかなりアフリカ要素の強いビートであるにもかかわらず、かけ声の「ワッショイワッショイ」の感じに打ち消されちゃう。で、これが日本人の持っているグルーヴだとすれば、小室哲哉Perfumeのような四つ打ちが受け入れられやすいというのはほぼ必然ということになる。な〜んて感じの「日本人とグルーヴ」という話はきっとネットのどこかにあるだろう、あんまり興味はない。

ちょっと例の田母神論文でこのワッショイ感を思い出したのだ。

あの論文は気持ちがいい。電車やバスは定刻を守り、工業製品は1ミリも狂わない、そんな日本人がご存じ経済成長を遂げたんだが、その前の世代は、同じ勢いで外に戦争しに出かけた。経済成長の成果は目に見える形になったが、緒戦の連勝街道を突き進んだ頃の日本軍も同じだったろう。このワッショイワッショイのグルーヴは半端じゃない。それをまるごと肯定しようって言う論文なんだから気持ちもいいはずだ。

しかしまあ、戦争を始めることになった日本の政治はお粗末過ぎるひどいもんだと思う。それに比べると、めっちゃくちゃな現実の上に民主主義というワード「のみ」で強引に二党制でやって来たアメリカの政治は、良いも悪いも含めて最強。だから田母神さんが「アメリカにハメられた」と言っててもまったくその通りなんだが、それを言った時点で政治では負けが確定するってことについては、彼は政治家ではないから知るところではない。まずそこが田母神さんカッコ悪い。

あと、「南京大虐殺はなかった」とか本気で言うのはどうか。イラクのアブグレーブ刑務所とスーパーフリーの事件を見ただけでも、ワッショイ感覚の田舎から出征した日本のにわか軍人が、大陸に行ってなんやかやしていたのは容易に想像できる。これ別に日本人が悪いって言うんじゃなくて、戦争に行った人全般に言える話。虐殺なんてなくとも、従軍慰安婦なんていなくとも、小突く叩く怒鳴る小馬鹿にする悪戯するちょろまかす…ということは普通にあっただろうて。殺してはいないとしても、馬鹿にされた中国人の悔しい思いが集積して形になったのが40万人だっけか、あり得ない数の虐殺の抗日記念館なんかに繋がっているんだろう。っていう想像を欠いて、なお「日本の植民地化は欧米のそれとは違う」と言い切るなんてのはなかなかできない。

いや、いや、できるんだよな、思い当たるフシがあった。ワッショイワッショイやってる時は全然気がつかないんだよ。そうすると、自虐史観というのは「はしゃいだ次の朝に二日酔いで猛省しているの図」に近いものがある。バカやっちゃったなあ。もう分かったって。もう飲まないって言うけどまた飲むよな。とりあえず仕事行かないとな。こんな自問自答を戦後ずっと繰り返していたと思うと笑える。