Old Days / John Hiatt
オールド・デイズ/ジョン・ハイアット
俺はブラウニー・マギー師匠と楽屋で座ってたんだ
ブラウニー師匠はデュワーズのウイスキーのミルク割を飲んでた
「ジョンよお、ブルースがお前をラクにするなんてこと
どこにも書いてねえんだよ」とか言ってさ
ああ昔のこと思い出してきた俺はサニー・テリー師匠と後ろの座席に乗ってたんだ
サニー師匠は小さいハーモニカ奏者だけど車をよく乗り回しててさ
ホントの名前は「Harry」なんじゃねえかと思ったくらいで
豆腐やら生野菜やらナッツ類を彼に食べさせようとしたんだが
サニー師匠は結局どれも喰わなかった
数週間ぐらい彼と同じ部屋に寝泊まりしてね
そしたらサニー師匠、シーツの下から目を開けっ放しにして
こっちをじーっと見ながら眠るんだわ
俺は若くて不安だったんで、気にせずに気持ち悪いってことを伝えたんだ
ああ昔のこと思い出してきた
(※)
昔のこと思い出してきたよ
俺にとっちゃタダ同然のそんな話の
なにがすげえのか知らねえけど
期待に応えられることはないけど
俺がいたそこら中の昔の話、思い出してきたよ
モーゼ・アリソン師匠と中西部をあちこち回ってた頃
俺の歌詞がどことなく詩人ケネス・パッチェンの詩を思い出させるねってモーゼ師匠が言って
俺はそれを褒め言葉として受け取った
彼は「君の傷付いた心にネオンサインをかぶせる」って詩を引き合いに出してて
後になって俺は彼の意味してるのが何か分かったジョン・リー・フッカー師匠とワシントンで対バンやったライブの日
俺の歌を演ってる時に彼はゴージャスな女と一緒に腕を組んでやってきてさ
すっと歩いてきて俺の歌ってるステージの脇に座ってさ
そしてこう言ったんだよ…「若造、ごきげんよう。俺がトリだぜ」(※)
バンクーバーでジョン・ハモンド・ジュニア師匠とのギグを演った時
エキゾチックな踊り子さんが俺の楽屋にやってきて、エキゾチックに踊りだした
その夜はお客さんもなんかしら吸っててさ、まったく猫の小便みたいな臭いだった
ああ昔のこと思い出してきた南のバトンルージュではゲイトマウス・ブラウン師匠とのギグがあった
師匠はヒルビリー、ジャズ、ケイジャン、カントリー、ザディコ、ブルースともうなんでも演った
まるで音楽の遠心分離機かなんかみたいに、その音楽は壁を突き抜けて放射されていた
ああ昔のこと思い出してきた(※)
John Hiatt買った。すごくよかった。
しかしブルースの師匠たちを目一杯並べたわけですが、モーゼ・アリソンなんてのが出てくるあたりやっぱりクセモノって感じですごくいい。ちなみに歌詞のモーゼ・アリソンの部分、これつまりよくあるホモ話って思ったんだが…ちょっと自信ないです。
この歌は一曲めなんだけど、なんつーのか、昔話をしてるっていうだけの歌詞なんだけど、並びや韻やら統一感もなにもないっていうか、本当に歌いながら考えたような感じですごくいい。
いや本当にすごくいいCDだった。デレクも聞いてるけど、ブルースに限らず音楽ってのはそれなりの「老い*1」がまたよかったりするわけで、その部分ではデレク以上であります。
- アーティスト: John Hiatt
- 出版社/メーカー: New West Records
- 発売日: 2008/05/22
- メディア: CD
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*1:と言えば聞こえがいいけど、加齢臭とも言える