アレサとその他のQueenたち

Amazonの策略にまんまとはまった、というような買い方をしていると、「あなたの欲しいものリストに入っているものを買っている人はこんなものも買ってます」で必ず張り付いてきてたのが、アレサ・フランクリンのこの盤だった。

Rare & Unreleased Recordings From the Golden Reign

Rare & Unreleased Recordings From the Golden Reign

あまりにもしつこく張り付いてくるので、この界隈では購入している人が多かったのだろう。今さらアレサなんぞ、という気持ちも確かにあったが、Amazonカスタマーレビューも5件超えていて名盤臭はする。だもんでえいやっと決断して買った。まったくこれがすごくよくてさー。Jerry Wexler監修によるアレサ・フランクリンの、録れたてのデモと未発表テイクを集めた2枚組。やはり1枚目の、教会で唄ってるところを引っ張ってきたような「生アレサ」は知っといても損はなかろう。「生アレサ」「Jerry Wexler」「マスルショールズ」という時期の設計図がよく見えてくる構成だ。

Queen of Soulという呼び名はアレサ一人で十分だと思う。というのも、このテの音楽がどういうわけかSoul Musicと呼ばれていた時代を過ぎると、アレサは急に数字が悪くなっていく(一度80年代にポーンと売れてはいるが)。ゴスペルを下地にしてブラックパワーをアピールしていた音楽は、アフリカ系アメリカ人コミュニティの中での格差が生まれるに従って、どうも鉄板ではなくなってしまったようだ。もろにゴスペルのアルバム「Amazing Grace」を出すあたりの1972年の背景は、きっとそういう時期の数字と重なってくるのかもしれない。ジェリー・ウェクスラーがアトランティックを去るのは1975年。その頃にはブロンクスでヒップホップ…つまりディスコに対する闘争が始まっていたのだから、年代的には合致する。この時期Soul Musicは、フィリーだディスコだと節操なく切り刻まれたイメージももちろんあるんだけど、どちらかというとアレサやサム・クックやオーティスを源流とした音楽が、より広く緩い流れになっていったというイメージもあるわけで、どうだこうだと断定することは難しい。

アレサのNatural Woman。ようこんな映像ありますわい。

その後のQueen

個人的には、この後の新たなQueenは、80年代のAnita Baker、アニタ・ベイカーの登場まで待つって感じ。その後90年代になって、今度はメアリー・J・ブライジで度肝を抜かされるって感じ。アレサぐらいのインパクトがあったのは、せいぜいこの二人くらいだと思うんですよね、それぞれの時代に吹いた瞬間風速の強さっていう意味で。

アニタのSweet Love。

メアリーJのNatural Woman。

こうやって3人並べてみると、それぞれの時代のファッションというか雰囲気を、ずいぶん日本の女性シンガーも真似してるんだなあと感じた。それから最後に、アニタについてはホイットニー、メアリーJについてはマライアがいるので、ホントはQueenなんて決めなくてもいいのにな、ややこしくなるからな、と思いました。