「カントリーは白人のもの」だって?

カントリー音楽は白人保守層のもの…なんてあっさり書いちゃうと、これまた自分の頭の中で揺り戻しが起こる。まずひとつ、カントリー音楽は保守ってわけではないでしょ。チックス以前もガース・ブルックスは非常にリベラルな立場でカントリーを歌っていたわけで、ガツーンと保守に傾いたのは多分911以降なんじゃねえのかなと思う。それからもうひとつ、白人だけじゃなくて黒人も歌ってますって話。特にチャーリー・プライドっていう不世出のヒットシンガーもいる。彼のヒット曲「Is Anybody goin' to San Anton」はおなじみダグ・サームもカバーしてる。要するにこれはご当地ソングってわけだから、サンアントニオ出身を自称する者ならきっと誰が歌ってもハマる。もちろんオリジナルのチャーリー・プライドが一番いいんだよ。

ただ、この「黒人アーティストもいますよ」とわざわざ注釈をつけるやり方は、むしろ白人のみの市場であることを証明しているように思う。最近のとても忌まわしい話としては、Cowboy Troyというアーティストがいて、カントリーでラップをやるという「Hilly Hop」とか呼ばれているんだが、一目見て恥ずかしいと思ってしまった。

日本で言ったらジェロの海雪が売れているという事態だと理解しているのだが、この自分の中の違和感っていうのはなんだろう。ちょっと説明するなら、ラップはその発祥から人種的な音楽だったと思っているためかもしれない。ブロンクスのブロックパーティでジャマイカ系移民が始めたラップが、カントリーのシーンで自然発生的に現れるはずがない。ないだろ、ないよね? だからCowboy Troyというアーティストにどうしても捏造のイメージがつきまとうのだ。その捏造感を楽しめるかどうかがポイントだろう。

ただ、これが自分の思い込みなのかどうかはいろいろ英文のサイトを見てみないとまだ分からない。本人は心底カントリーっ子なのかもしれない。大昔にグランド・オール・オプリのオープニングでハーモニカを吹いていた黒人のDeFord Baileyはカントリーの人と言われているが、あのハーモニカはブルースですよね、と言えばそれまでだ。チャーリー・プライドがカントリーを歌ってソウルを歌わなかった理由は、レイ・チャールズだって普通にカントリーのアルバムをリリースしていたように、一言で言えば金になるかどうかってことだったかもしれない。あ、そうか。今はっきり分かっているのは、ソウル・ミュージックの側が長く「人種的な」音楽であったってことか。

カントリー音楽と人種、そしてチャーリー・プライドですか。また勉強することが増えたなー。