ふと思い出した話

そういやなんで自分がUKに思い入れがないか、という理由を言うのに、ちょっと思い出した話がある。ロンドンに行ってたヤツがいる。当時ドラムンベースが最先端っていう時期で、そいつも渋谷と六本木のwaveを自転車で往復していたようなヤツだったので、案の定最新のドラムンベースにハマった。ドラムンベースはすごいぞってうわごとのように僕に話したその一週間後には、さくっとロンドンに旅立った。ちょうど1990年頃かな、そういう行動力のあるヤツだった。

で、そいつが帰って来たら、なんか現地のクラバー連中に吹き込まれた言いっぷりで開口一番、「ドラムンベースユニバーサルミュージックなんだよ!」と抜かした。「太古から人間が奏でてきたリズムすべてが入ってるんだよ!」アフリカン、レゲエ、ボサノバ、なにからなにまで、あの16ないし32ないし64だか128だか、の中に詰まっているんだよ。だから世界中のどの人種、どの民族が聞いても踊れる素晴らしいリズムなんだ、と。当時流行っていた恵比寿のおしゃれ立ち飲みバーで話してた。もうこれは好みの問題だからなにが正しいってわけじゃないんだけど、僕はその時直感で「んなわけねーじゃん」と言い返したのを覚えている。

それからというもの、おびただしいカテゴライズが、まるでパンドラの箱を開けたかのように拡散していったような気がする。ジャングルビート、ドラムンベース、リキッドファンク、アシッドハウストリップホップ…ええ加減にせえ、と思った。今カタカナで書き起こすと、これ全部五七調なんだよ。UKとか欧州のダンスシーンは日本に親しみやすかった理由はこれなのかもしれない。

で、ずいぶん最近の話だが、Chopped and screwed、カタカナで書くとチョップドアンドスクリュード、というのがテキサスはヒューストンのクラブで火が点いた。僕はこれがぴったりハマった。どっかで見聞きしただけのうろ覚えなんだけど、ドラムンベースは「UKによるヒップホップへの回答だ」とかなんとか、そんな上から目線な言い方もされていたと思うんだけど、チョップドアンドスクリュードは回答…でもないんだよな。ただの余興っていうか。さかのぼればヒップホップも余興だったんだよな。