こういう時代のバンドの話

「派遣切り」ですか。

切られた派遣はどこへ行くかというと、アルバイトとか日雇いとか、になるんだろう。なにしろ一面的な状況しか報道されていないようなので、具体的にはよく分からん。ニュース番組でも新聞でも、「ある程度年齢がいってて、なおかつ働く気力もあるのに、機会がない、これってふざけてませんか世の中」というストーリーにどうしても仕立ててしまう、これはある意味、マスコミの「クセ」なのだろう。

ところでアルバイトとか日雇いとかをしている人の中には当然バンドをやってる人がいる。よく「食えないバンドマン」という表現があるけれど、この打ち込みのご時世に、食えてるバンドマンという方が珍しい。どのみち平日にライブがあったり練習したり全国ツアーしたりする稼業であるから、9時5時の仕事を持続するというのは難しくなる、すると選択肢としては時間を選べるアルバイトのような仕事、ということになる。ところがこういう時代になると、正社員とか派遣社員で働いていたが切られたというようなマジメな人たちが、フルタイムで働くのも厭わずにゆくゆくは正社員に…という気持ちでアルバイトで入ってくる。そうなると、「社長、来月半ばオレ休みマッス」と言ってたバンドマン君たちの立ち位置も変わってくるだろう。当然雇う側だって厳しいわけで、そんなに休む人よりは、そうじゃない人を選ぶだろう*1

これは、今後バンドの危機になるであろうと推測する。

普通に考えたらフジロックに出てるバンドのすべてが、日本の小さな音楽シーンで食えてるわけがない。ところが音楽シーンというのは、そういう食えてないバンドで支えられているというのが現実。ほとんどのバンドはフジロックではノーギャラだから、バンド側の誰か(レーベルだったり事務所だったりバンド自体だったり)が自腹切ってるわけで、その金はどこから出てくるかというと、ほとんどの場合はアルバイトだとかの音楽以外のシノギ、ということになる。

となると、その食うためのシノギができなければ、もはや音楽活動なんて捨てなくてはならんかもしれん。いきおい、現状以上に、音楽を換金することしか考えが及ばなくなるかもしれない。そうすっとさらに腐った音楽シーンになってしまう。このネガティブなスパイラルを音楽に昇華させた連中が1970年代のUKにいた、って認識を今も俺はしているんだが、これが正しいのかどうか分からない。だって今この瞬間でも俺は、例えば豊田市出身の4人組のパンクバンドが、ある日見たこともないような怒りを身にまとってテレビに登場することを夢想しているんだが、いっこうに何かが始まる気配すらない。それはそれでいつもの風景ではあるが。

*1:もっとも最近は現場自体がないって話だけど