Jerry Reed!!

実はトラックのエントリー以来、Jerry Reedを四六時中聞いている。めちゃくちゃハマっている。

普通のアーティストは、一時期の才能と最大瞬間風速だけで長く食っていくものだろうけど、ジェリー・リードの場合、いつの音や映像を聞いても、おっさんなのにガキっていう、相反する二つのことを簡単にこなしている。

同じようなアーティストにJohn Hiattも入るんだが、彼の場合はおっさん以降のアルバムが秀作と思って、まあJohn Hiattを飲みながら聞いていてツラツラ考えたことは、加齢臭こそが音楽に必要不可欠なのだって自分なりに解釈していたんだけれども、Jerry Reedを知るとその考え自体が吹き飛んだ。だってこの人は昔からおっさんでありガキであるのだ。もしかしたらブルーグラスの音楽の中には、「すべての男は永遠にガキである」っていう精神性が脈々と続いているってことなのかもしれない、とかなんとかさー、音楽を音楽として総括するような評論家の頭なんて最初っから眼中にないんだってば。目の前の時間と空間と酒とリズムといかに絡むか、うまく踊るか、それとも格闘するのか、っていうあたりがずーっとテーマだったのかもな、と思った。過去形で言ってしまわなければならないのが本当にツライ。 2008年9月1日に71歳で亡くなっているんだよねえ。

拾える動画のことどとくが驚異。1970年代のテレビで演奏した超高速アラバマジュビリー。

RCAの大将Chet Atkinsとはずーっとズブズブの関係であったと思われる動画。

そのおよそ15年後、同じ二人でやったBob Dylanの名曲「Don't Think Twice, It's All Right」。この動画はDVDになってるらしいんだが、なにがカッコいいかって帽子だよ帽子!

この曲って、演者がどういう気持ちで「くよくよすんなよ」って言うか、っていう古典落語みたいな曲で、旦那のスライドギターをかまして大いなるサウスウエスト感をブルースを交えて醸し出そうとしたSusan Tedeschiのバージョンって、気持ちは分かるんだがありがちなやり方なのだ。ところがJerryの解釈ってのが、盤に入ってるバージョンはこの動画よりも早くて、歌い方のスタイルもピッキングのフレーズも、なにひとつ本家を踏襲してねえんじゃねえかというくらいの出来上がり。

Jerry Reedの魅力ってのはテレビ番組でのカブキ方にあったんじゃないかと思う。この辺の堺正章に通じる感じを見ていただきたい。きっと当時の日本のテレビマンもこんなスターを熱望していたんじゃなかろうか、とか思わせるし。

さらに80年代に入ると、トラッカー映画でもって人気俳優にもなった。いわゆるポップスターであったわけで、もちろんこういうステージショーでも映えるし。

多少の汚れ仕事というかどんな現場でも、持ち前のアドリブを発揮して軽くこなしたんだと思う。

Stagger Leeという古くさいフォークナンバーもまた名曲だが、Jerry ReedがやるとRCAとかエルヴィスあたりの熱狂の遺伝子そのまま直結っていう雰囲気が漂うし。

ちなみに下がアイズレー兄弟初期の歌うスタガリー。

こっちはこっちでまたメシ何杯でも食える動画だけど、ここではJerry Reedのかませ犬として引用させていただきました。

なんていうかもう…今さら白いとか黒いとか言ってられんね。長い間、というか今でもダマされているんだけれども、音楽を人種で隔ててきたのは売る側だってことを、Jerry Reed見て分かっていただきたい。なんて言いつつ、例えばJerry ReedとBuddy Guyの絡みなんてのが実現しなかったのだろうか。実現できていないとなれば、そりゃアメリカも恥ずかしい国だわなあ。